読者の知識と作家の知識の差 【小説の書き方】

 前章ではストーリーの組み立てについて解説しました。この章では文章を書く際の注意点として「読者の知識と作家の知識の差」について記します。
 小説を読むということは文章を読み、読者一人一人がその物語を頭の中で思い描く事です。ここで注意しなければならないのが「読者の知識と作家の知識の差」です。
 例えばですが「驟雨」という漢字があります。あまり一般的な漢字ではありません。この漢字は「しゅうう」と読み、短期間で降り止んでしまう雨のことを言います。「にわか雨」とほぼ同義の言葉です。
 なぜ「驟雨」という漢字を使ったのか、読者が納得できる明確な意図がない限り「にわか雨」に言い換えても問題はないです。複雑な漢字を頻繁に使うと、作家にとって読みやすくても、読者にとっては読みにくい文章になります。
 あなたがその漢字を読むことができ、意味を理解していても、読者がわからなければ、そこで小説を読むのを中断し、漢字の意味を調べなければいけません。読者がどんなシーンなのか想像を膨らませながら読んでいたのが、その漢字が出た事で止まってしまいます。それでは読みやすい小説とは言えません。
 専門用語に関しても同じ事が言えます。題材によってはどうしても使わなければいけない専門用語が出てくるとは思いますが、その場合、読者がわかるように解説をいれなければいけません。
 ただし、全ての用語に解説を入れるとなると解説ばかりの読みにくい小説になってしまいます。ストーリー上、どうしても出さなければいけない専門用語以外は言葉を言い換える、その言葉自体を省く等をして読者が読みやすいようにしましょう。
 ですが、漢字と違い専門用語には例外があります。作家を志している人ならば理解していると思いますが、小説にはジャンル・テーマというものがあります。歴史小説、SF小説、推理小説等、他にも様々なジャンルやテーマの小説があります。あなたが書く小説が例えばSF小説ならば、それを読む読者はどんなジャンルを好むでしょうか。もちろんSF小説です。
 ならばSF小説でよく使われる専門用語は、SFファンの読者にとっては普段から目にしている用語です。一般的な言葉にもなりつつありますが、「AI」「アンドロイド」「コールドスリープ」「タイムスリップ」等は解説を省いても意味は通じるでしょう。造語を使うとしても読者にとってなじみ深い言葉同士が重なる場合が多いので解説は少量で済みます。ただし、メインであるテーマ以外の部分、例えば推理小説に出てくるトリック。トリックの内容で推理小説に全く関係ない専門用語が出てくるのであれば解説は必要です。
 SF小説を執筆するのであればSFの専門用語に対しての解説は少量で済ませる、小学生、中学生に読んでほしいと思うのなら難しい漢字は控えるなど、「誰に読んでほしいのか(読ませるのか)」で、小説中に登場するキーワードや漢字が変わっていきます。自分が考えたストーリーは誰が読むのかを考え、読者の知識と作家の知識の差をなるべくなくしていくことが読みやすい小説を執筆できることに繋がります。
 しかし、その事ばかりに気を取られ肝心のストーリー構成や文章がおかしくなっては本末転倒です。自分でも難しいと思う言葉以外は気にせずに執筆を続け、ある程度執筆が進んだ時に誰か他の人にチェックしてもらうことを勧めます。その時に「どの言葉が難しかったか」「読みにくい漢字はなかったか」などを聞いて修正を加えていきましょう。