誰の視点なのか

前章で記述した神の視点ですが、これは小説における人称のことです。小説には必ず語り手がいて、その語り手が誰かなのかで小説の書き方が変わっていきます。
小説に置ける人称には大きくわけて四つあります。「一人称」「三人称」「二人称」「特殊形式」の四つです。
一人称というのは小説の登場人物が語り手となるものです。「私は~~」「俺は~~」という明確な主語がある文章です。一人称の多くが物語の主人公を語り手とするものです。有名な作品で夏目漱石の「我輩は猫である」があります。これは猫の「我輩」が主人公であり、小説の語り手になっています。語り手の感情が文章中に多くでることで、主観的な小説になります。
三人称は語り手が登場人物の誰でもないもののことを言います。「彼は~~」「彼女は~~」「○○は~~」というような客観的な視点で描写されているものです。前章で説明した「神の視点」というのはこの三人称の分類になります。三人称には一元視点と多元視点の二つがあり、多元視点のことを多くの作家は「神の視点」と呼んでいます。一元視点は特定の登場人物からの視点から物語を語る物で、例えば「彼」の視点で物語を客観的に書く事をいいます。多元視点、「神の視点」は登場人物の誰の視点からでも物語を語るものです。三人称の利点として視点を動かしやすく、時間や場面変化を起こしやすいというものがあります。
二人称は「君」「あなた」など、作家が読者に、または物語の主人公に語りかける書き方です。一人の登場人物に限定して語られているため、一人称に近いですが、登場人物自身の内面ではなく、他人から見た登場人物を細かく書かれているので客観的でありながら感情移入しやすくなります。
最後に「特殊形式」ですが、これは上記の三つに含まれないものです。例えばですが、一人称複数の「ぼくらは~~」というように書いてある小説があります。アゴタ・クリストフの「悪童日記」です。これは一人称でありながら、心理描写が一切ないものです。その事で一人称でありながら文章が客観的になっています。日本の作品でいうと村上春樹さんの「アフターダーク」があります。これの視点は一人称複数であり、小説内で肉体を持たない「私たち」を主語にした小説になっています。特殊形式の人称を扱う事は稀で、その視点で書くという意図があってその書き方になります。
日本の小説では「一人称」か「三人称」のもの、両方を複合した物が多いです。自分の考えたストーリーはどの書き方がいいのかを考え、どの人称で書いていくかを決めましょう。
例えばですが一人称の小説には「恋愛小説」「アクション小説」等、主人公の「心理描写」や「五感描写」に重点を置くものに適しています。三人称の小説には「推理小説」「SF小説」など「風景描写」を細かく描写するのに適しています。しかし、今挙げた例えはあくまで例えですので参考程度に思っていてください。「シャーロック・ホームズ」シリーズ等、主人公の相棒であるワトソンの一人称の小説もあります。
自分のストーリーや設定に合わせた人称の書き方を見つけてください。